「中高では柔道で28年間に114件の死亡事故が起こっている」という数字をもって武道の必修化に反対するのはやや無理筋だという件(要約版)

前エントリhttp://d.hatena.ne.jp/Ri-fie/20120126/1327585771が長くなりすぎたので、ごく簡単にまとめておく。

○「28年間で114件の死亡事故が起こっている」のは、中学・高校の、部活も含めた数値である。

○「授業の柔道」と「部活の柔道」では、運動強度に雲泥の差がある。

○武道が「授業」として必修化されるのは、中学1・2年生だけである。必修化とは言うまでもないが、「全員が柔道部に入れ」という意味ではない。

○中学での柔道の授業中に起こった事故は、28年間で1件である。
柔道による死亡事故 1983-2010年度(28年分)に発生した 114件 の事例一覧(pdf)

○さらには、「柔道固有の原因」でいうと0件である*1

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柔道は武道であるが、同時に格闘技である。誰よりも強く…と極めようとすれば必然的に事故も多くなる。
それは車だって同じだろう。素人ドライバーでも、一度も事故を起こしたことのないという人は無数にいるだろうが、そんな素人よりも、遙かにテクニックも体力も集中力も勝っているプロのドライバーで、サーキットで接触・リタイアしたことがない人はまずいないだろう。
レースを見ていれば、多くて50台程度が走っている程度でも、1時間半ほどで必ず5〜6件は事故が起こっている。事故率でいえば「1時間半で10%」だ。
だからといって、この一事をもって「素人ドライバーはプロのドライバーより運転が上手だ」などと言ったら嘲笑されること疑いない。

部活の柔道での事故の多さには、深い悲しみを感じる。「学校の部活動としての柔道で、『強さ』をどこまで追求するか」も含め、今一度考える必要もあると思う。
だが、この「114」という数字をもって必修化に反対することは、いわば、素人ドライバーの日常生活での事故率と、プロのドライバーのサーキットでの事故率を一緒くたにして「1時間半に10%の割合で事故を起こすから道路を運転してはダメ」と言うようなものではないだろうか。

もちろん、車の運転も柔道も、リスクはゼロではない。そのリスクを嫌って車の運転や柔道に反対するという考え方もあるだろう。
また、いうまでもなく、柔道に限らず、どうスポーツ事故を減らしていくかというのは、考えなくちゃいけない。
だが、事故のリスクを過大に見積もることによって反対し、結果として抑圧してしまうのは、なんか、ちょっとなあ…という感じではある。

ましてや、陰謀論めいたこととかはね。

*1:言うまでもないけれど、だから柔道は安全だ、なんて主張する気は全くない