まつもと泉先生について、とりとめもなく書いてみる
+ サイキンのまつもと +
- [メモ]
悲しい。『きまぐれオレンジ☆ロード』は、ストーリーと全く関係ないけれど雰囲気は分かるタイトルの最高峰と思う。この漫画の影響で中学生になるとカフェバーでバイトして友達と酒飲むものと思ってた。ほか…文字数
2020/10/13 07:39
ブックマークのメモでは文字数が到底足りなかったのでこちらに書く。
ほとんどは『きまぐれオレンジ☆ロード』の思い出になるのだけど。
ネタバレ多数含む。
【『きまぐれオレンジ☆ロード』について】
・春日恭介は超能力をただ自分の欲(とりわけ三角関係を維持するためだったり、鮎川まどかにいい顔をするためだったり)を満たすためだけにしか使わない「中学生~高校生ののび太」だということに気づいたのは少し後になってから。
・春日のセリフで一番好きなものは「ふたりだけでウッシッシ」。何だよウッシッシって。大橋巨泉か。
・でも欲望丸出しのこのセリフは友人間で流行した。
・鮎川まどかは元伝説の不良で普通にタバコも酒もたしなむ中3、だけど立ち位置としては清純派という、今思えばわけの分からないキャラクターだった。
・結果としてタバコはやめたけれど、春日と出会っていなかったら、吸い続けていたよね。
・タバコをやめたきっかけは、春日に「丈夫な赤ちゃんが産めなくなる」みたいなことを言われたから。初対面の女の子(本当は初対面じゃないけれど)に言う言葉じゃないよ春日。
・素直にやめる鮎川。
・でも酒はやめない。春日も止めない。
・結果として読者、というか小学生当時の自分に「タバコは体に悪いけれど酒は問題ない」という誤った認識を植え付けることに。
・ついでに、「中3にもなればカフェバーでバイトして酒を飲むものなんだなあ」という誤った認識を植え付けることに。
・檜山ひかるは不遇な子だった。今のラブコメならば、ウザさを抑えてもう少しけなげに描くんじゃないだろうか。
・そういえばこの子も最初はタバコ吸ってたな。
・1年前はランドセル背負っていたとは思えない。
・自分が春日だったら、取りあえずひかると付き合っちゃうな。「自分を好きになってくれている人(それが実際にそうなのか、単なる誤解かを問わず)を、好きになる」ことって、結構多いと思う。
・鮎川とは、ひかると別れた後に付き合えばいいだけだし(と、大人になった今なら思える。ひどい大人になってしまった)。
・でも多分、ひかるとは別れることなく、長く楽しく付き合い続けていると思う。
・最初のころだったか、くるみが一人でぶらついたことを「ネギしょったカモがICBMで飛んでいったようなもの」みたいに表現していたのはセンスの塊だと思った。
・最終盤だったと思うけれど、まつもと泉先生をモデルにしただろうバンドが出てきて「俺は地獄の××××」「お前に不幸の手紙(ラブレター)を書いてやる」「夜明けのユンケルもう1本」とかいう感じの歌詞と「ドボーン」「ギャボーン」「ズガボーン」というドラム音?が強く印象に残っている。やっぱりセンスの塊だよ。
【『きまぐれオレンジ☆ロード あの日にかえりたい』について】
・「『きまぐれオレンジ☆ロード』の世界を知っている」という条件付きにはなるけれど、個人的には邦画史上最高傑作(さすがに言い過ぎたが、邦画オールタイムベストの50には確実に入る)。
・『きまぐれオレンジ☆ロード』が「中学生~高校生のドラえもん」ならば、『あの日にかえりたい』は「ドラえもんが未来の国へ帰った後のドラえもん」であり、恭介は超能力=ひみつ道具を失った(あるいは、ひみつ道具を使わない決心をした)のび太。
・「主人公は超能力を使える」という、原作中で最重要のギミックをあえて外すことで、超能力による三角関係維持の帳尻合わせや予定調和をさせず、青春の終わりの痛みを描ききった。
・原作は心の一番柔らかいところに置かれた、本当に大切なものだが、唯一、納得がいかなかったのは、ひかるが今で言う「理解のある彼女さん」だったこと。ビンタ一発で終わるかよ、と(もちろん、話としてそういう終わり方があってもいい)。その意味で、『あの日にかえりたい』の執着の方がしっくりきた。
・作中、鮎川と春日は、ひかるが指摘するように「ズルい」し、冷たい。けれど、未成年の子なんて、本当はこんなものだと思う。
・幸せになろうとする鮎川と春日。「姉」と「恋人」を失い、ただ叫び、泣き濡れるばかりのひかる。その対比は残酷で、ある種ぶざま(ひかるがぶざま、という意味ではなく、この関係性がぶざま。相対的によりぶざまなのは、春日と鮎川)だけど、でも、青春ってそういうものなのだと思う。
・作者のまつもと泉先生は、『あの日にかえりたい』があまりお好きでなかったと聞く。
・それは無理もないと感じる。
・国内でDVD化されていないのも、そのせいかと思う。
・『あの日にかえりたい』は、何も『きまぐれオレンジ☆ロード』の世界で描く必要はなかったのでは、という批判を見かけた記憶がある。それはその通りだと思う。とはいえ、3人の関係性をゼロから描いて、かけがえのない存在にまで高めてから、あのような展開に持ち込むには、何時間の尺が必要だろうか。先生が築き上げた『きまぐれオレンジ☆ロード』という強固な世界が前提としてあるから成立した話だとも思う。
・自分は、『きまぐれオレンジ☆ロード』という、理想のような青春の箱庭から登場人物が出て行くことで、逆説的に、彼らが伝説となり、輝いた存在になったとも思っている。
・恋をして、愛して、傷ついて、壊れる話が好きになったのは、間違いなく『あの日にかえりたい』のせい。
【その他】
・まつもと泉先生、ロックがお好きだったよな。
・先生がドラムを叩いたLPを持っている。一度も聞いていないけれど。そもそもレコードプレーヤーを持っていない。
・『ハート オブ サタデーナイト』という中編が面白かったという記憶は残っている。
まつもと泉先生の描く、かわいくて可憐でちょっと意地悪で、「どこかにいるのでは」と思わせる、質量のあるキャラクターが大好きでした。どうぞ安らかにお眠りください。