遠く6マイルのあなたへ

日立市に入るとさ、両側から無骨な造形の工場群と配管が迫ってきて、そのすき間…北行きなら右手に太平洋が見えるよね。あの景色が好きでね。毎年、出かけているんだ。

あなたも、この景色を見て育ったんだろうなって、思ったりしてたよ。

あなたの訃報に接してから1週間。
ようやく、あなたについて何か書けるようになった。

インターネットのばかばかしさと楽しさ、あるいは、ばかばかしいことの楽しさに気付かせてくれたのは、あなただった。
インターネットで文章を書くとき、お手本にしたのは、あなたのサイトであり、あなたの小説だった。
いろんなところで、あなたに似せたつもりの文章を書き散らかしていたから、もしかしたら、何かの偶然で、あなたの目に触れていたかもね。
もし、そんなことがあったとしたら、あなたはきっとあきれていただろうけれど。申し訳ない。

かえりみると、10冊以上出版している作家の中で、商業出版されたすべての小説を購入し、読んでいるのは、東野圭吾と、村上春樹と、そして、あなただけだったんだ。

東野圭吾村上春樹、そして、あなた。
人から見れば、おかしな取り合わせなのだろうね。
でも、僕にとって、あなたは、そういう存在だった。

ヤマグチノボルさん。

僕は、あなたのいないこの世界で、もう少しだけ生きていく。
いつかまた、この世界でないどこかで、あなたと、あなたの文章に邂逅することを、楽しみにしながら。

どうぞ、安らかに。